2024年、日本の上場企業で「早期・希望退職募集」を行った企業は、前年の41社から39%増加し、57社に達しました。
募集人数は1万9人と、前年の約3倍に急増。背景には、黒字企業を中心とした事業構造改革があります。
特に目立つのは、大手メーカーによる大規模募集です。
例えば、オムロンでは1,000人、資生堂は1,500人、コニカミノルタはグループ全体で2,400人を募集しています。このような動向は、グローバル競争の激化や従業員の高齢化が要因とされています。
- 2024年に早期・希望退職を実施した上場企業は57社で、前年から大幅増加。
- 黒字企業の構造改革が中心で、募集人数は1万人超に達した。
- 電気機器業界が最多で、オムロンや資生堂、富士通などが大規模な募集を実施。
- 希望退職の背景には経営環境の変化やグローバル競争の激化がある。
どの企業が早期退職を募集しているのか?
主な企業と募集規模
以下は2024年に早期退職を募集した主要企業の例です。
- オムロン:構造改革プログラムの一環として1,000人を募集。
- 資生堂:“ミライシフトNIPPON2025”計画のもと1,500人を対象に。
- コニカミノルタ:グローバル構造改革で2,400人を募集。
- リコー:セカンドキャリア支援制度に基づき1,000人を募集。
- 富士通:200億円の特別費用を計上し、早期退職を実施。
- 日産自動車:国内人数は未定ながら、グローバルで9,000人の募集を計画。
電気機器業界が最多
業種別では、電気機器業界が13社と最多を占めています。
これには、富士通やシャープといった企業が含まれます。また、情報・通信業や繊維製品、医薬品業界でも早期退職が実施されており、広範囲な業種にわたっていることが分かります。
早期退職を実施する理由
黒字企業がなぜ退職を進めるのか?
2024年に早期退職を実施した企業のうち、約6割が黒字企業でした。この背景には、以下の理由が挙げられます。
- 経営資源の再配分 事業ポートフォリオの見直しを進める企業が、将来の競争力強化を目的として、人材配置の最適化を図っています。
- 人件費の削減 高齢化に伴う人件費の増大が、企業経営を圧迫しているため、効率化を進める必要があります。
- 技術革新への対応 デジタル化やAI導入により、従来型の業務が不要になるケースが増えています。
従業員側の影響
早期退職は企業側にとって有効な手段である一方、従業員にとってはキャリアの転換点です。
例えば、早期退職を経験した元従業員が再就職を目指す際に、従来のスキルが需要に合わない場合があります。
大手製造業を早期退職した53歳の男性は、長年の技術職経験を生かすべく準備を進めてきましたが、転職先を見つけるのに苦労したと語っています。一方で、同じ境遇の元従業員がFIRE(Financial Independence, Retire Early)を目指して早期退職を前向きに捉えるケースも見られます。
今後の展望と課題
経営環境の変化
2025年以降も早期退職の増加が予想されています。
例えば、ルネサスエレクトロニクスは国内外の社員約2万1,000人のうち、5%未満を削減すると発表しました。
企業がより柔軟な組織運営を目指す中で、従業員と企業の双方に新たな課題が生じています。
社会への影響
早期退職の増加は、個人のキャリアに留まらず、労働市場全体に影響を及ぼします。
特に、高齢化社会が進む日本では、労働力不足と人材の流動性が今後の大きな課題です。
専門職の経験が豊富な人材が退職後に再就職を希望しても、十分な受け皿がないことが多いです。一方で、若い世代の労働市場への参入が進むことで、新しい産業構造が形成される可能性もあります。
まとめ
2024年に57社もの上場企業が早期・希望退職を実施した背景には、経営環境の急激な変化があります。
これらの動向は、企業が競争力を維持しつつ、労働市場全体に与える影響を考慮する必要性を示しています。
今後の展望として、早期退職が労働市場の流動性を高める契機となる可能性がある一方、従業員のキャリア支援や再就職の受け皿を整えることが課題となるでしょう。